収蔵資料

文化史 自然史 技術史

■考古資料

概要

 本館所蔵の考古資料は、実物の資料だけで30万点を越す厖大なコレクションであり、国宝1件、重要文化財4件を含んでいる。その資料の蒐集は濱田耕作が京都大学に赴任する以前から始まり、大正5年(1916)に日本で最初の考古学講座が文学部に創設されてからは、その調査研究活動の進展とともに資料の蓄積が飛躍的に進んだ。収蔵資料は、日本、朝鮮、中国はもとより、インド、アフガニスタン、エジプト、ヨーロッパ、アメリカなど世界各地にわたり、各地域の代表的な文化の遺物に接することができるように配慮されている。また、出土地の明らかな資料が多いことも特色のひとつであり、学史的な発掘調査によって得られたものも多い。そのため、比較研究の基礎資料として、今日でも多くの研究者によって利用されている。

 文学部考古学研究室は、その創設当初から発掘調査を主要な活動とし、成果を『京都帝国大学文学部考古学研究報告』(既刊16冊)として発表するとともに、出土遺物に対する研究を継続してきた。その結果、収蔵資料には標準資料として学史上重要なものが多く含まれることになった。代表的なものとして、医学部に属した研究者であった長谷部言人、清野謙次らとともに、総合調査を行った大阪府国府(こう)遺跡・岡山県津雲(つくも)貝塚・熊本県轟(とどろき)貝塚・鹿児島県出水(いずみ)貝塚など縄文人骨が出土した遺跡、層位学研究の典型例となった鹿児島県指宿(いぶすき)遺跡、弥生時代の甕棺墓調査の嚆矢である福岡県須玖岡本(すくおかもと)遺跡、弥生土器の編年研究を大成させた奈良県唐古(からこ)遺跡、古墳時代では金銅製装身具で著名な滋賀県鴨稲荷山(かもいなりやま)古墳、傑出した巨石古墳の奈良県石舞台(いしぶたい)古墳などがある。また、各地の史跡調査を委嘱されることも多く、地元の京都府では、縄文時代の北白川小倉町(きたしらかわおぐらちょう)遺跡、弥生時代の函石浜(はこいしはま)遺跡、古墳時代の寺戸大塚(てらどおおつか)古墳・妙見山(みょうけんやま)古墳・椿井大塚山(つばいおおつかやま)古墳、寺院跡では北白川(きたしらかわ)廃寺・高麗寺(こまでら)など、重要な遺跡の出土資料が多い。

 海外では、日本の歴史に影響を与えた中国や朝鮮半島が重視され、さまざまな時期の資料が蒐集された。東亜考古学会によって発掘された中国東北地方の先史遺跡の出土資料は、中国中原の文化の広がりを考えるうえで重要である。また、清朝の著名な学者である羅振玉氏からは多くの中国考古資料が寄贈されている。濱田耕作が考古学の方法を学んだイギリスのペトリー博士からは、エジプトの考古資料が寄贈されたほか、大英博物館寄贈のヨーロッパの旧石器資料、インド考古局寄贈の旧石器など、海外との学術交流によってもたらされた資料も収蔵資料の重要な一部を占めている。

国宝1件

重要文化財4件


(2001.4.19一部修正)