平成14年度特別企画展

薬と自然誌


期  間:平成14年6月1日(土)~9月1日(日)(月・火曜日休館)

開館時間:午前9示30分~午後4時30分(入館は午後4時まで)

会  場:第2企画展示室(南棟2階)


ごあいさつ

 「薬と自然誌」を企画展示で開催することになりました。われわれ人類は、動植物を食料として摂取します。栄養補給の目的のほかに、ある動植物のもつ特定の効果を期待して「体内に取り入れる」ことから、薬の使用が始まりました。民族によって使用される薬の種類は異なります。世界の民族が使用する薬は、きわめて多岐にわたります。常設展示のメインテーマは京大の野外研究ですが、特殊な内容である「薬」の分野は盛り込めませんでした。「薬と自然誌」は、企画展示にふさわしいテーマであると思います。京大でユニークに発展してきた霊長類学は、サル類が薬を使用していることを見い出しました。これは驚きです。薬の概念を拡大しますと、フェロモンのような「香り」の効用もふくまれることになります。昆虫類も薬を使用しているのです。「薬」の世界の多様性をお楽しみ下さい。

総合博物館長 瀬戸口烈司

「薬と自然誌」へのいざない

 人はいにしえより自然界から様々な物事を学び、利用してきましたが、病気を治す「薬」もまた、人が自らの実体験を経て自然界から選び出した特別な「もの」のひとつです。
 この度、京都大学総合博物館の企画展として、「薬と自然誌」というテーマを掲げ、自然界からの薬とそれに関係する様々な視点から、京都大学の研究を紹介することになりました。
 今回の展示では、薬の発見や多様性、世界各地で使われている伝統薬など、京都大学の教育・研究用資料として、また現地調査などで集められた資料をもとに、伝統薬の世界を紹介します。また、京都大学でなされた伝統薬の研究や,貴重な本草関係の資料も併せて展示、解説します。
 最近の研究は,人に固有と思われていた「薬」の文化が、霊長類にまでさかのぼれることを示しています。また、霊長類の薬と人の薬の間にも共通したものがあることも判ってきました。この裏付けとなる事実も貴重なグラビアと映像で紹介します。
 人が自然界から選びだした薬に含まれる有効成分は、二次代謝産物といわれるもので、多くその生物の生命維持に直接関係するものではありません。これらの化合物には、その生物が生き残り戦略の一つの手段として,進化の過程で生み出してきたものもあり、その化学戦略がいかなるものか、具体的な事例で紹介します。
 今回の企画展示は、総合博物館を核に薬学研究科、霊長類研究所、農学研究科の関係研究室が協力して進めてまいりました。この展示を機会に、多くのかたがたが京都大学の学の集積を体感されるとともに、自然や科学への更なる興味を覚えていただきたいと期待いたします。

実行委員長 大学院薬学研究科教授 本多義昭


展示項目

人とくすり
1. くすりの発見
2. 世界の生薬
3. 伝統薬を現地に探る
3. 薬用植物成分の研究
4. 本草学の流れ

動物とくすり
6. 動物界の医療とくすり
7. チンパンジーの医療とくすり
8. くすりの起源説

農業とくすり
9. 植物由来の虫除け

昆虫・植物とくすり
10. くすりと昆虫行動
11. くすりと植物現象