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輝安鉱(stibnite, Antimonit)Sb2S3。斜方晶系(写真の標本の長さ約27cm)

 もとは農学部に所蔵されていた。総合博物館発足後まもなく、直前まで農学部に所属の中坊教授に導かれ農学部のプレハブづくりの収蔵庫の地学標本調査をした折りに再発見。日本各地の鉱山より産出の鉱物標本群の一つ。
 愛媛県市ノ川鉱山産で、伊藤貞市・桜井欽一改編の日本鑛物誌上巻(1947、中文館書店)には、「結晶片岩中の石英脈より産出す」とある。明治14年から明治15年にかけては、とりわけ大きな結晶を多産、世界の著名な博物館に市ノ川の輝安鉱として収蔵・展示されている。
 農学部から発見された日本産鉱物標本は総計400点を超え、今はすべて閉山してしまった鉱山からの美品揃いで、一級の学術的価値を有するコレクションである。現在学内外の協力を得て、整理を行っている。
 鉱物は、農の礎たる土壌の重要な構成要素である。それを、教育するために第一級の鉱物標本群が整備されたのであろう。やがて80周年を迎える農学部、その創設当時の教育に対する意気込みを今に伝えるコレクションでもある。

(文責:大野照文)