総合博物館客員教授(平成14年9月1日 - 12月15日)

伊 惠珠 博士
Dr. Yun Hye-su


 伊 惠珠(ユン・フェス)先生は、韓国・延世大学地質学教室で地質学古生物学を修められた後、ドイツ・¥ボン大学の地質学古生物学研究所で、理学修士、そして1979年には理学博士を取得されました。その後韓国に戻られ、現在は忠南国立大学地質学教室教授、また韓国古生物学会副会長を務められています。

 先生のご専門は渦鞭毛藻の化石で、ボンで微化石研究の世界的権威であるKlaus J. Mueller教授の下でドイツの白亜紀の地層からの渦鞭毛藻の分類記載で博士号を取得されて以来、25年c近くにわたってその研究を続けられています。微化石はわずかな堆積岩の塊からも大量に見つかるため、ボーリングコアなど限られた資料しか入手できない石油探査など、応用面を含めて地質年代を決めるのに有効な化石(示準化石)として利用されています。また、渦鞭毛藻は環境の変化に敏感に反応して分布その他を変えるので、過去の環境を調べるのにも有効な化石です(示相化石)。ユン先生は、渦鞭毛藻のこのような利点を生かして、現在日本海形成初期の頃の様子をボーリングコアからの資料も交えて詳しく調べておられ、今回日本の資料も含めた集大成を視野に入れて客員研究員として9月~2月まで総合博物館に滞在されました。赴任の直前にも対馬にサンプリングに赴かれるなど日本の地質も良く知っておられます。

 趣味は、登山など野外におられることがお好きとのことです。韓国では、都会を離れた山中に別荘を構えるのが今流行とのこと。先生も数年かけて候補地を探され、「2003年にはいよいよ庵を構えようかと思っている」と話されていました。なによりの自慢は、この庵の敷地内に、「たまたまではあるが、韓国でもっとも大きなモクレンの樹があるのですよ」だそうです。

 英語も堪能ながら、留学の経験から非常に格調が高い正当派のドイツ語をお話しになります。外国語を学ぶことが大変お好きで、滞在されている間も、しばしばテレビで耳にされた日本語をメモされ、その意味だけでなく、ニュアンスまでを問われました。さすがに3ヶ月半の滞在では流暢な日本語は無理でしたが、サバイバル・ジャパニーズは見事に習得され、生活にはほとんど不自由されない様子でした。先生によると、日本語と韓国語は文法的にきわめて似通っているのでお互いに勉強しやすい。ただし、韓国語のほうが発音が難しいので、韓国人は日本語に早く習熟するが、日本人は韓国語に習熟するのはそう簡単では無いだろうと、持論を展開されていました。

 滞在期間中には、日本海の成立についての研究を勢力的にまとめておられました。いずれ近いうちにその成果を出版されるご予定です。