総合博物館 レクチャーシリーズ(Honzou-e)NO.2

「7億年前、地球は凍結した?」開催報告

スピーカー:川上紳一先生(岐阜大学教育学部地学助教授)
日時:平成14年10月26日土曜日 13:00 - 14:30
場所:京都大学総合博物館内 ミューズラボ
参加者:約35名


 世界各地には、約7億年前の氷河堆積物が広分布しています。一方で、これら氷河堆積物がきわめて温暖な環境で堆積した縞状の炭酸塩岩に直接被われていたり、20億年以上前に形成の最盛期が終わったはずの縞状鉄鉱床が氷河堆積物に挟まれて存在するなど、この時代には簡単には説明つかない様々な謎がありました。最近、謎の全てを合理的に説明する大胆な作業仮説がだされました。それは、地球全体が凍結するほどの代氷河期を仮定すれば、その期間中、あるいはその直後に謎とされた堆積物の形成に都合のよい環境が出現したはずだという「全球凍結仮説」で、実際、古地磁気学的研究結果からは、氷河堆積物が低緯度でも形成されたことも示唆されています。

 ただし、この仮説は地球表面全体が凍結したという、これまで気候学者によってあり得ないとされた事態を提唱していて、反論も多く、地球科学のホットな話題となっています。

 はたして7億年前に地球表面全体が凍結するような事態に陥ったのでしょうか。川上先生は、真相解明の鍵となる地層が最も良く分布するかアフリカ大陸の南部、ナミビアの地に、一昨年、昨年と日本の様々な大学(京都大学総合博物館からも参加)の研究者からなる調査隊を率いて現地の調査をされました。その、過酷な野外調査の末に得た成果に基づいて、研究の最前線をレポートしてくださいました。ナミビアから持ち帰った氷河堆積物の巨大な標本なども見せてくださり、7億年前の氷の世界にひきこまれるような迫力あるお話を楽しむことができました。

 なお、川上先生は、ウェッブを使って様々な理科教材を公開されています。興味をお持ちのかたは、是非

http://chigaku.ed.gifu-u.ac.jp/chigakuhp/html/stu/kawa/kawakami.html

にアクセスしてみてください。(-->「現在の研究内容」-->「地学情報部」参照)