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総合博物館 Q&A


 

  • Q: 京都大学に所蔵されている自然史標本資料にはどんなものがあるのですか?(京都市在住、主婦、39歳)

    A: 現在,京都大学には100年にもわたって収集されてきた200万点におよぶ自然史資料が保存されています。その中には、「すみわけ理論」で有名な今西錦司博士収集の昆虫標本のような、著名な研究者のコレクションも多数あります。またエゾカワウソなどのように、すでに絶滅した多くの生物も含まれています。新種を見つけたとき、その「戸籍原簿」となる「タイプ(基準)標本」も多数存在します。これらは、文化財でいえば国宝や重要文化財に匹敵する重要な標本です。


  • Q: 研究が終わった標本をわざわざ保存しておく意味なんてあるのですか?(京都市在住高校生、男性、17 歳)

    A: 最近、火星から降ってきた隕石中から生命の痕跡らしきものが発見され、話題になりました。また、映画『ジュラシック・ パーク』で御存知のように、化石から DNA を取り出すこともできるようになりました。隕石や化石が採集された当時、それがこのような研究につながるとは誰にも予測できませんでした。研究試料(一次資料)そのものを残しておけば、将来、分析・観察技術の進歩とともに、さらに新しい発見が生まれることが期待されます。自然史標本試料は、いつまでも新しい知的生産のための未知の情報を秘めた「学術資源」であり続けます。


     

  • Q: 博物館は標本の倉庫ですか?(滋賀県大津市在住、自営業、男性、55歳)

    A: 貴重な標本資料を整理し、収蔵しておくことは博物館の重要な仕事で、資料の倉庫であることも博物館の一つの役割です。しかし、資料を収蔵しておくだけでは普通の倉庫です。博物館は探究心に満ちた研究者や、研究に必要な適切な研究機器が存在する知的生産の場でなければなりません。総合博物館は、校倉(あぜくら)に最新研究設備を合体した、いわば、21世紀の正倉院を目指します。


     

  • Q: 最近、ディジタル博物館が話題になっていますが?(大阪府枚方市在住、自営業、男性、53歳)

    A: 総合博物館に収蔵される標本の数は前述のように膨大です。それらを即座に利用できるように資料の画像やDNA等の種々の情報をディジタル化し、電子の符号として保存します。そうしておけば、インターネット等によって世界中からその情報を即座に複数の人が手にいれることが可能になります。いわば、従来の博物館の他に、もう一つの目に見えない博物館ができることになります。
     古文書や美術品など、取扱いの難しい資料についても、ディジタル化しておけば、半永久的に資料情報を保存しておくことができ、研究や展示の際にも破損や劣化の心配がありません。
     このように総合博物館はディジタル化も推進して、従来の博物館よりも利用しやすいものとなるでしょう。


  • Q: 総合博物館では展示はしないのですか?(東京都在住、出版編集者、女性、36歳)

    A: もちろん展示をします。日本で一番多くのノーベル賞受賞者を出してきた京都大学の博物館にふさわしいものにします。最先端の研究成果を紹介し、学内外の研究者や学生の独創的研究意欲を刺激するような、創意に満ちた展示にします。


     

  • Q: 京大は一般には近寄りがたい雰囲気がするのですが?(京都市在住、公務員、女性、22歳)

    A: 総合博物館は、社会に向かって開かれた施設として、大学の近寄りがたいイメージを打ち破ります。研究が細分化、先端化されるにしたがい、部外者にはそれらの研究は難解なものになりがちです。総合博物館では、最新のマルチメディア技術を駆使し、最先端の研究成果をわかりやすく紹介します。見るだけでも楽しく、見終わった後で科学や大学に親しみを覚えていただけるような施設にします。


     

  • Q: 単に楽しい博物館というだけでは、社会の支持を得られないのではありませんか?(東京都在住、NGO関係者、女性、58歳)

    A: 若者の理科系離れ現象は、技術立国であるわが国の将来の発展を根底から覆す危惧をいだかせます。総合博物館では、魅力ある展示や博物館友の会(近く作る予定です)の行事・公開講座などの博物館の活動を通じてつねに若者の知的好奇心を刺激し、次代をになう中・高校生の理科系離れの阻止に寄与します。
     また、子供達が、楽しみながらも、展示を見ることによって命の尊さや自然保護の重要性が理解できるようにします。
     20世紀に人類は、天然資源・化石燃料を大規模に消費することによって、さまざまな便利さを享受してきました。しかしその一方で、このままでは自らの生存環境をも破壊しかねない危機的状況を生み出してきました。ながい地球の歴史のほんの端っこに顔を出した生物、ヒト。総合博物館では、常に、人類と地球との共存を視野に入れて、活動をするように努めてゆきたいと考えています。


     

  • Q: 帰国してからも京大のことを知りたいのですが?(ドイツ在住、元京大留学生、女性)

    A: 多くの方々に総合博物館のことを知ってもらえるように、このホームページを開設しました。充実したものにすべく、日々、頑張っています。日本語版だけでなく、広く世界の人々にも総合博物館に親しんでもらえるように、英語化にもつとめます。
     また、将来は所蔵標本のデータベースも発信しますのでご期待下さい。

     

1997年5月