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京都大学総合博物館客員教授(平成12年4月1日~平成12年8月31日)

アンドレアス・キュッパース氏

Andreas Kueppers


 キュッパースさんは、1954年生まれのドイツ人です。大学院までは、地質学・古生物学を専攻され、とりわけコノドントと呼ばれる微細な化石を使って地層の時代を詳しく決定・編年したり、それに基づいて地質構造を明らかにする研究を行われました。その後、日本に興味を持ち始め、何度も来日しておられます。氏が日本に興味を持たれた詳しいいきさつは聞いていませんが、一つにはご母堂が鍼灸の研究で日本を訪れておられたことも関係するのかもしれません。ボン大学の古生物学研究所時代の同窓ということで、1984年に彼が最初に来日されたときから京都や東京で頻繁に落ち合って旧知を温めておりました。


息子のジモン君と

 さて、氏の最初の訪日は、1986年9月からの1年で、このときは、ドイツ学術交換会(DAAD)の奨学生として通産省工業技術院地質調査所客員研究員として滞在され、日本の地質や災害予知・予防について研究されました。どうやらこの間に日本とドイツの学術交流の歴史に興味をもたれたようで、その後1989年から1992年にかけてドイツ国立日本学研究所東京駐在研究官として東京に滞在された際には既にナウマンをはじめとするいわゆるドイツ人お雇い教師の研究に着手されていました。
 その後、ドイツ国立地球科学研究センター(ポツダム)の研究開発企画調整担当官として勤務され、研究を続けてこられました。研究成果の一部は1997年に日本の各地の博物館で巡回開催された日本の魚学の父とされるドイツ人学者ヒルゲンドルフについての展覧会企画の骨子として生かされています。また、近年糸魚川市に開館したフォッサマグナ博物館の立ち上げにも尽力され、その結果遺族からのナウマンの遺品の寄託を受けることが出来、優れた展示が実現したというエピソードもあります。
 さて、総合博物館では、4月から8月までの5ヶ月の滞在期間中に日本の近代科学の振興に着よしたドイツ人学者たち、とりわけナウマンについての科学史的研究を行われる予定です。流暢な日本語を駆使され、すでに精力的に資料収集を行っておられます。ナウマンが当時の日本政府に提出した上申書など新しい資料も見つかり、現在京都女子大学の野上裕生教授と共同で現代語およびドイツ語への翻訳作業などをされております。
 今回の京都での滞在がナウマンやその他のドイツ人「お雇い教師」の研究のレベル向上に大きく役立つとおっしゃっていただいており、受入教官としても喜んでおります。
 奥様のユッタさんもかつて日本に永く滞在されたことがあり、日本語が堪能で、息子のシモン君とともに5月から6月にかけて京都に滞在され、京都に残る日本文化を堪能されています。

(総合博物館教授・大野照文)