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My Photo かくたに たけひこ

角谷岳彦

京都大学博士(農学)

京都大学総合博物館(情報発信系部 門・助手)
〒606-8501
京都市左京区吉田本町
Tel: 075-753-3285
Fax: 075-753-3276


本籍地 大阪府
昭和37年5月20日生 (満38才)、男

現住所
滋賀県大津市比叡平 2-22-5
郵便番号 520-0016
電話番号 077-529-2707


電子メール: kakutani@inet.museum.kyoto-u.ac.jp


このページは以下の情報を含みます

参照したい情報を以下の項目から選べば、その項へ飛びます。

  1. 研究概要
  2. 略歴
  3. 論文リスト
  4. 外へのリンク


  1. 研究概要
  2. ツリフネソウを送粉するトラマルハナバチ

     これまで、私は、虫媒花と訪花昆虫の相互作用を送粉生態学的見地から研究し てきました。同一地域に生息する虫媒性植物群集と訪花性昆虫 群集の間には、共進化によって成立した一定の相互作用系があると思わ れます。私 の研究の究極目的はこうした群集レベルの相互作用系を扱い うる理論の確立です。

     その前段階として、まず、どのような系が、自然条件下に存在するのかを調査 することにしました。自然条件下で各種の花を利用している昆 虫の群集構成を明らかにするために、井上民二、加藤真らとともに、京都府下の3地 点、芦生、貴船、京大農学部構内において、開花していた 花を記録しつつそこに訪花していることを確認した全ての昆虫を花を区 別しながら 採集しました。この結果、3地点あわせて、1478種の昆虫が 256種の花を利用していることが明らかになりました。この中には、単に花を訪れて いただけの通過者、花蜜や花粉を利用しているだけの盗蜜者 や盗花粉者、送粉に関わっている送粉者が含まれています。また、報酬として花蜜を 分泌する花と、花粉を過剰に生産している花が、それぞれ、 どの種類かがわかりました。植物の科毎に主にどの目の昆虫が訪花しているかという 視点からクラスター分析すると、3地点とも、膜翅目が多 いクラスター、双翅目が多いクラスター、鞘翅目が多いクラスターの3クラスターが 明瞭に分離されました(Kakutani et al., 1990; Kato et al., 1990; Inoue et al., 1990)。

     さらに、上記のデータに基づき、芦生と京大構内の2地点について、植物の科 毎、種毎に、訪花している昆虫の目別、科別、種別の構成比に 注目して、クラスター分析と正準判別分析をおこないました。その結果、原生状態の よく保存されている芦生では膜翅目マルハナバチ亜科のミヤ ママルハナバチとトラマルハナバチが、植物の種毎の訪花昆虫相を特徴づけて、3ク ラスターにうまくクラスター分けできることが分かりまし た。すなわち、ミヤママルハナバチが多く訪花する種類の花と、トラマルハナバチが 多く訪花する種類の花と、その他の花にクラスター分けで きました。この分かれ方は植物の系統的関係とは、あまり関係がなく、同じ科の植物 の中にも異なるクラスターに入る訪花群集パターンの種が あり、植物の科毎のクラスター分析の結果を不明瞭なものにしていました。また、京 大構内では、分類の階層によって、互いに矛盾するクラス ターわけが起こり、クラスター間の類似性が正準判別分析で棄却できないこともあ り、うまくクラスター分けできませんでした(unpub.)。

     これらの結果から、芦生のような原生状態の林では、一部の種の植物 群が系統 関係を越えて特定の訪花者を送粉者とすることで、植物と送粉 者の共進化が起こり、それが昆虫間の資源をめぐる競争関係に影響を及ぼし、訪花性 昆虫群集に一定のパターンを作り出していると推定してい ます。ただし、こうした作用系は京大構内のような撹乱環境では、単純にはパターン 化できないことが、上記の結果から推定できます。

     次に、私は、花蜜を分泌することで送粉者を集めていたいくつかの種 類の花 で、花と昆虫の相互作用を明らかにするデータをより精密に採る ことにしました。このさい、上記の解析で重要性の明らかになったマルハナバチ類の 送粉者としての働きや競争能力に特に注目しました。植物 の報酬提供パターンと送粉者がそれを利用するパターンを定量的に評価することは、 送粉生態学上の重要なテーマのひとつです。植物が提供す る報酬の中で花蜜はエネルギー源としての餌です。子供を産み育てるには、エネル ギー源の他にタンパク源や巣材などが必要になることもあり ますが、エネルギー源としての餌が不足してしまうと訪花活動そのものができなくな ります。それゆえに、送粉者が花を利用するパターンの決 定には、第一義的に、花蜜の利用に関わるエネルギー収支が重要となり、その後、花 粉などのその他の報酬をいかに利用するかが問題になる場合 が多いようです。よって、このテーマの研究は、花蜜からはじめるのが、適当と思わ れます。その結果、いくつかの花でそれぞれに固有の様式で 有効な送粉者の花蜜利用効率が上げられていることがわかってきました。

    ヤブガラシの写真

     たとえば、ヤブガラシではその花蜜生産の日周性が有効な送粉者と思 われるニ ホンミツバチのこの花への訪花の日周パターンと見事に同調し ていました(Kakutani et al., 1989)。ニホンミツバチ におもに送粉さ れるヤブガラシでは、11時と15時に蜜量がピークを示すように花蜜の分 泌と再吸収 が同調的におこり、高度の採餌能力を持つ送粉者であるニホ ンミツバチがこの蜜量ピーク時の直前に集中的に訪花するのに対し、盗 蜜者は、だ らだら訪花したり、花蜜のない時間帯に多く訪花したりしま した(角谷, 1992)。同様に、ノブドウでは花蜜生産の日 周パターンが 有効な送粉者と思われるニジイロコハナバチのこの花への訪花の日周パ ターンと一 致していました(Unpub.)。他方、ツリフネソウでは花蜜生 産の日周性はなく単調に花蜜を分泌しつづけるものの、花蜜が渦巻き状 になった距 の中に貯るために有効な送粉者と思われるトラマルハナバチ 以外はほとんどこの蜜を利用できないことがわかりました(Unpub.)。

     送粉生態学は、農学上は、有用作物の受粉効率を高めるための送粉者 利用を考 えるさいに有益になります。自然送粉者による送粉が期待でき ないハウス栽培で、虫媒性作物をつくる場合は送粉者の導入がとりわけ 重要です。 現状では、理論的背景を持たないままに、試行錯誤的に送粉 者の導入がなされることが多いようです。これに対し、私は、自然条件 下での調査 から得たいくつかのポイントを押さえつつ、イチゴのハウス 栽培における送粉者の導入に関する研究を前田泰生、手塚俊行らととも におこない ました。この研究においては、現在普通に用いられているセ イヨウミツバチと今後利用が期待されるミナンカバウハリナシバチにつ いて、その 送粉効率と採餌効率を比較することによって、理論的に最適 な送粉システムのあり方を検討しました(Kakutani et al., 1993)。

     また、博物館には、250万点を超える貴重な標本資料が収蔵される予定です が、これらを効率よく管理するためには、電子データベースの 構築が不可欠です。群集解析で培った情報処理理論を駆使して多様なニーズに応える データベースシステムの開発を現在手がけています。誰もが 博物館標本に関する情報やその所在を容易に検索できるシステムの開発が、もう一つ の私の研究課題です。

     博物館に収蔵予定の標本データベースの作成は平成10度より始まりました。 データベース自体の作成は情報発信系部門の共同研究作業ですが、私自身は昨年度よ り、将来この博物館データベースシステムと連携させる予定の 昆虫同定支援システムの開発に着手しています。

     昆虫類は、動物界中、もっとも種類数が多く、身近な存在でありながらも一般 市民にとって、その種名同定は困難を極めます。現行の標本 データベースシステムは種名などの分類情報で検索を行い標本画像を得るという使い 方はできますが、逆に手持ちの昆虫標本や標本画像から種名 などを調べるという使い方はできません。

     そこで、なんとか昆虫標本の画像から自動的に特徴を抽出して、同定支援を自 動化することが出来ないかを現在研究中です。そのプロトタイプ として、ニホンミツバチとセイヨウミツバチの自動判別システムの開発を手がけてい ます。羽根の部分を拡大するように撮影した標本写真を特徴抽出用 システムで処理したものを元に多変量解析で類似性を処理し、知識工学を援用した判 別システムを用いることで、両種のもっとも顕著な違いである 後翅中脈が明瞭に写っている場合には自動判別可能なシステムになりつつあります。


  3. 略歴
  4.  氏名:角谷 岳彦 (カクタニ タケヒコ)
     
     本籍地:大阪府 
     生年月日:昭和37年5月20日
     性別:男性
       学歴
         昭和56年3月  大阪府立四条畷高校卒業
         昭和57年4月  京都大学農学部農林生物学科入学
         昭和61年3月  同上 卒業
         昭和61年4月  京都大学大学院修士課程入学
                      (農学研究科農林生物学専攻)
         昭和63年3月  同上  修了
         昭和63年4月  京都大学大学院博士後期課程進学
                        (農学研究科農林生物学専攻)
         平成 3年3月  同課程研究指導認定
         平成 6年3月  同上  退学
         平成 6年7月  京都大学博士(農学)  取得
       職歴・研究歴
         平成3年4月  学術振興会特別研究員(DC)  採用
             (平成5年3月まで)
         平成6年3月  京都大学農学部  研修員  採用
             (平成7年7月まで)
         平成6年11月  京都大学総合人間学部  非常勤講師  採用 (生物学実習担当)
             (平成8年3月まで)
         平成7年8月  京都大学生態学研究センター  COE非常勤研究員  採用
             (平成8年3月まで)
         平成8年4月 同志社大学 嘱託講師 採用 (計算機実習担当)
             (平成9年3月まで)
         平成8年4月 京都大学生態学研究センター 研修員
             (平成8年9月まで)
         平成8年10月 京都大学生態学研究センター  COE非常勤研究員  採用
             (平成9年3月まで)
         平成9年4月 京都大学総合博物館 助手  採用
             (現在に至る)
       所属学会
         個体群生態学
    会、種生物学会、日本応用動物昆虫学会
       賞罰      なし
       扶養家族  なし
       配偶者    なし
     


  5. 論文リスト
    1. 学会誌に掲載された論文
      • Kakutani, T., T. Inoue and M. Kato (1989) Nectar secretion pattern of the dish-shaped flower, Cayratia japonica (Vitaceae), and nectar secretion patterns by insect visitors. Researches on Population Ecology, 31: 381-400.
      • Kakutani, T., T. Inoue, T. Tezuka and Y. Maeta (1993) Pollination of strawberry by the stingless bee, Trigona minangkabau and the honey bee, Apis mellifera: an experimantal study of fertilization efficiency. Researches on Population Ecology, 35: 95-111.
    2. 紀要等に掲載された論文
      • Kato, M., T. Kakutani, T. Inoue and T. Itino (1990) Insect-flower relationship in the primary forest of Ashu, Kyoto: An overview of the flowering phenology and the seasonal patterns of insect visits. Contribution from the Biological Laboratory, Kyoto University, 27: 309-375.
      • Inoue T., M. Kato, T. Kakutani, T. Suka and T. Itino (1990) Insect- flower relationship in the temperate deciduous forest of Kibune, Kyoto: An overview of the flowering phenology and the seasonal pattern of insects visits. Contribution from the Biological Laboratory, Kyoto University, 27: 377-462.
      • Kakutani, T., T. Inoue, M. Kato and H. Ichihashi (1990) Insect-flower relationship in the campus of Kyoto University, Kyoto: An overview of the flowering phenology and the seasonal pattern of insect visits. Contribution from the Biological Laboratory, Kyoto University, 27: 465-521.
      • 角谷岳彦 (1991) 花と昆虫のエコロジー--- データベース作成とラベル 印字. 日本の生物5(2): 50-55. 文一総合出版.
      • 角谷岳彦 (1991) 花と昆虫のエコロジー---基礎データの解析. 日本の 生物5(4): 50-55. 文一総合出版.
      • 角谷岳彦 (1991) 花と昆虫のエコロジー---花蜜の分泌パターンの測定. 日本の生物, 5(5): 52-57. 文一総合出版.
      • 角谷岳彦 (1991) 生態学におけるSAS利用. 個体群生態学会会報, 48:61-66.
      • 角谷岳彦 (1992) ヤブガラシの花蜜分泌とミツバチの訪花行動. ミツバチ科 学, 13:27-34.
      • 角谷岳彦 (2000) 「京都大学標本データベースの現状と未来」, 第4 回太陽 地球環境研究の コンピューティング研究会講演論文集, 45-46.
    3. その他の著作
      • 角谷岳彦 (1990) トチノキ. 『フィールドウォッチング1』 pp.14-17. (田 中肇編, 北隆館).
      • 角谷岳彦 (1991) ヤブガラシ. 『フィールドウォッチング4』 pp.32-35. (田中肇編, 北隆館).
      • 角谷岳彦 (1991) 芦生のマルハナバチ. 『京都の昆虫』 p.149-152. (京 都昆虫研究会編, 京都新聞社)
      • 角谷岳彦 (1993) 植物の花蜜分泌様式と訪花者の利用様式. 『花に引き寄せ られる動物--花と送粉者の共進化』 pp.79-102. (井上民二・加藤 真編, 平凡 社)
      • 角谷岳彦 (1996) 盗蜜者を欺くトチノキの花. 『森の木の100不思議』 (日本林業技術協会編)pp.56-57.
    4. 口頭発表
      • 角谷岳彦・井上民二 (1987) ヤブガラシの蜜分泌様式と送粉者の訪花様式に みられる相互適応. 応用動物昆虫学会第31回大会(講要 p.47), 筑波 大学.
      • 角谷岳彦・井上民二 (1988) トチノキの開花戦略とそれを利用するハナバチ 間の競争. 応用動物昆虫学会第32回大会(講要 p.91), 高知大学.
      • 角谷岳彦 (1988) 花蜜の分泌パターンとミツバチ科ハナバチの採蜜様式. 日 本生態学会近畿支部会例会(日本生態学会誌39(2):166参照), 京都大 学.
      • 角谷岳彦 (1989) ツリフネソウの蜜分泌とその送粉者マルハナバチの蜜利用 について. 応用動物昆虫学会第33回大会(講要 p.199), 千葉大学.
      • 角谷岳彦 (1989) 花蜜の分泌様式とハナバチ類の採蜜パターン. 個体群生態 学会第14回シンポジューム(ポスター講演, 講演番号P-04), 湯布院 (大分, 九州大学主催).
      • 角谷岳彦 (1990) トチノキへのハナバチ類の訪花パターンとその送粉効率. 応用動物昆虫学会第34回大会(講要 p.63), 京都大学.
      • Kakutani, T. (1990) Competition between bumblebees and honeybees for japanese horse-chestnut flowers, Aesculus turbinata (Hippocastanacae). 第5回国際生態学会議(ポスター講演, session: Y-04, No. 616), 横浜.
      • 角谷岳彦 (1990) ハナバチ媒介花の花蜜分泌様式. 個体群生態学会研究集会, 大阪市立大学.
      • 角谷岳彦 (1991) 花蜜の分泌戦略と訪花者の利用様式. シンポジューム・送 粉共生系の生態学-花と送粉者の契約は相互に有利か-, 長野県安雲 村 (科研重点 領域研究319, 総括班主催)
      • 角谷岳彦・井上民二・手塚俊行・前田泰生 (1991) イチゴハウスの送粉者と してのハリナシバチとミツバチ. 応用動物昆虫学会第35回大会(講要 p.157), 静岡大学.
      • 角谷岳彦 (1991) 芦生の訪花性昆虫群集 (Community of flower visiting insects in Ashu). 個体群生態学会第15回シンポジューム(ポスター 講演, 講演番 号25, ポスタ-英文), 広島.
      • 角谷岳彦 (1992) トチノキの花蜜をめぐるハナバチ間の競争関係. 応用動物 昆虫学会第36回大会(講要 p. 67), 弘前大学.
      • 角谷岳彦・井上民二・手塚俊行・前田泰生 (1993) ハリナシバチとミツバチ によるイチゴの送粉:送粉受精過程の数理モデル化. 応用動物昆虫学 会第37回大会 (講要 p. 15), 信州大学.
      • 角谷岳彦 (1993) 芦生の植物別訪花昆虫群集に関する統計的解析. 日本生態 学会近畿支部会例会, 京都大学.
      • 角谷岳彦 (1994) 芦生演習林に咲く花の種別の訪花昆虫相に関する統計的解 析. 応用動物昆虫学会第38回大会(講要 p. 145), 東京農工大学.
      • 角谷岳彦 (1995) 京都大学構内と芦生演習林における送粉系. 個体群生態学会第 17回シンポジューム(ポスター講演), 三重.
      • 角谷岳彦 (1995) 芦生の訪花性昆虫群集. フィールド・シンポジュウム 「芦生 の天然林、単純化はどこまで進んだか」(京都大学芦生演習林主催).
      • 角谷岳彦 (1996) トチの実の豊凶に及ぼす訪花ハナバチ相の年次変化. 応用動物 昆虫学会第40回大会, 山口大学.
      • 角谷岳彦 (1997) 訪花昆虫の博物学. 「京都大学100周年と博物学」(京都大 学総合博物館主催)
      • 角谷岳彦 (1997) トチノキの花咲く森で. 第2回京都大学総合博物館公開講座 「野外調査と博物館」(京都大学総合博物館主催)
      • 角谷岳彦 (1999) 総合博物館標本データベースの現状と未来. 第4回太陽地球環 境研究のコンピューティング研究会 「リアルタイムデータとデータベース」(名古屋大学太陽地球環境研究所主催)


  6. 外へのリンク

  7. 京大博物館スタッ フ紹介へ

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