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ニュースレター

No.20(2006年2月28日発行)

平成17年春季企画展

『考古学を楽しむ-新堂廃寺出土瓦の分析-』
場所 京都大学総合博物館南棟2階企画展示室
期間 平成17年4月6日(水)~8月28日(日)

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平成17年春季企画展によせて

平成17年度の入学式に企画展示を創作しようと、平成16年の1月にホームページに企画員(ボランティア)の公募を呼びかけ、応募くださった3名、最終的には4名の方々と、1年間にわたって10度の討論会を(1回3~4時間)経て、この『考古学を愉しむ』の展示はできあがりました。

年間に1000億円を超える巨額の公的資金が使われている文化財としての考古資料を扱う調査に、多くの女性が活躍なさっている昨今の状勢に鑑みて、「女性が羽ばたく考古学」と題する展示を創ることを想定していました。具体的には、ガロッド女史、ルロワ=グーラン夫人、ソンヌヴィル=ボルド夫人などの考古学史に「方法」を伴って革新的な業績を残した女性研究者のお仕事に焦点を当てることを考えました。しかし科学する行為に「女性」とか「男性」とかの枠を設けて考える発想はおかしいとの当然の疑問が出され、「考古学の方法」を問う研究を捜すことにしました。考古学という「科学」が存在するについての「方法」とは何かという基本的な問題に、真正面から、素直に取り組むことになりました。考古学が扱う資料(考古資料)とは、(過去の)ヒトが作って使ったものですから、そのものに関わったヒトのジェスチュアーを、そのものやそれの痕跡から読み取る作業がなされていることが、わたしたちの取り上げる研究であるということになりました。

そこで展示の基本コンセプトは、展示物を見せるというよりも、「考古学者」がその頭脳で推理していく過程を観覧者が「追体験」(その気になられての話ですが)していけることということになりました。2度の討論会にまたがって激しい議論になったのは、「導線誘導型」の展示を採用するか否かの点でした。展示場の空間に展示物を置くことは、「考古学者」の思考を平面的配置を基調としつつ立体的に想定復原することになります。それには演示具の工夫を伴う展示物の見せ方や、展示ケースの配置が必須的に鍵を握る要素になりますので、「考古学者」の考古資料の「独創的な」見方を、展示技術の専門家によく理解してもらうのにかなりの時間を割きました。そして「その思考は誘導的に再現してもらうよりも、参観者が展示物のあいだを「さまよう」ように巡るなかで「追体験」しつつ獲得されていくのがよいと考えるに至りました。

考古資料の種類と言いますと、例えば石器、土器、埴輪、金属器(鉄器や青銅器など)、木器、瓦などをあげることができます。こうして羅列しますと、材質の別の呼び方と、機能を限定した「特殊」なものが混在しているように見えます。土器とは土で形を作って焼成したものであると言えば、瓦や埴輪はそのなかに含まれますが、何らかのものをなかに納めることができる形をとるものと限定すれば、器になっているのが前提となって、瓦や埴輪は除外されます。しかし石器、土器、金属器、木器といったカテゴリーとの整合性を問うときには、瓦、埴輪をそこに並べますと違和感を与えることは否めません。したがってこの種の呼び分けは便宜的なものでしかありませんが、瓦や埴輪と呼ぶものは、それらが造られるときの状況がより具体的に想定できそうに思えます。すなわち寺院(後には宮殿や家屋)が建てられるのが前提にあって瓦は造られるのですし、墓(古墳)が造られるのを前提にして埴輪は作られるのです。しかも両者とも、程度の差はあったとしても、一定の企画性を伴う工人組織が存在して造られたと考えることができましょう。もしもこの推定があたっているとしますと、瓦や埴輪は、ここに羅列した他のカテゴリーの考古資料よりも扱うのが易しいことになります。考古資料を認識して、論じる設定課題に適切な証拠を引き出す作業に「考古学の方法」があるとしますと、その提示には「扱い易い」瓦や埴輪を用いるのが分かりやすい説明ができるということが想像できました。

こういう具合に考えて、『考古学を愉しむ』と題する展示には考古資料のなかから瓦資料を取り上げることにしました。瓦を造るときにヒトが演じたジェスチュアーを頭に浮かべて、そのときにどのような痕跡が瓦に残るかを「考古学者」が想定して、過去のヒトのそのときの振る舞いを暴いていく証拠捜しを進める過程を展示しようということにしました。4つの時期にしか分けられなかった軒瓦をもとに、少なくとも8つ、または9つの造瓦される単位に、出土した(すべての)瓦資料を捉えています。木っ端微塵(こっぱみじん)になってしか出土しなかった瓦資料を出来るかぎり完全な姿にしようと「ひっつけ」まわした「考古学者」を見てくださってもよいのです。この木っ端微塵の瓦資料が示すこととして、どこから、「どれとどれが一緒になって出土したかを」正確に、細かく記録した「考古学者」の地道な努力を見てくださってもよいのです。そのような地道な努力の結晶が考古学の成果となることを示したいのです。それは「結果」を重視すぎるように思える現代世相に対して、地道な努力の大切さを訴えたい展示意図をも反映します。しかししょせんは展示です。参観者はお好きなように見られるのがよいのではないかと思います。

最後に申し添えますが、この展示にしている研究は、それまでは瓦資料など検討もしたことがなかった「考古学者」の手になったものですし、瓦資料の「専門家」はその研究について「沈黙」を守っておられるように思います。またこの展示は、展示などを企画する経験のなかった方々に広く呼びかけて、それに応じてくださった一般の方々の討論の結果の作品です。考古学とはどのようなことを、どのように知ろうとする科学なのか、展示とはどのように制作するものだろうかという、素直な問いに、真っ正面からひとつの答えを引き出した、わたしを含めての「アマチュアー」集団のひとつの答案です。

(京都大学総合博物館・資料基礎調査系・教授 山中一郎)

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平成17年春季企画展関連イベント

展示解説 毎週土曜日

瓦資料観察教室(造瓦道具の痕跡捜し) 7月23日(土)・8月20日(土)

[講演会]
「博物館展示と考古学の研究」8月6日(土)
「考古学研究と博物館の展示」8月7日(日)

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平成17年春季公開講座

「考古学を愉しむ-考古資料を読む-」

京都大学総合博物館 2階セミナー室にて開催。
各回 13:30~16:00
受講料:6,200円

  • 5月21日(土)「瓦を読む」 富田林市教育委員会粟田薫
  • 5月28日(土)「土器を読む」 奈良国立文化財研究所深澤芳樹
  • 6月4日(土)「埴輪を読む」 大谷女子大学 犬木努
  • 6月11日(土)「考古資料を読む」 京都大学総合博物館 山中一郎

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レクチャー・シリーズ

前回のニュースレターでの紹介以来、今年の1月から7月にかけて9回のレクチャーを新たに行うことが出来ました。月に1回という目標を少し上回っていますが、スピーカーの先生方のご協力のたまものであり、また参加者の皆さんの熱意も大きな支えとなっています。関係されたすべての皆さんにお礼申し上げます。具体的には、以下のような内容・スピーカーで開催しました。

特筆すべき点は、若手の研究者が何人もスピーカーを引き受けてくださったことです。伊勢戸先生(no.33)は、当博物館の研修員でありまた、日本学術振興会の特別研究員出もあります。また、厳先生(no.36)は、中国からの留学生として今年の春まで京大大学院教育学研究科の大学院生でした。さらに、甲斐先生(no.38)は、昨年春まで京大大学院農学研究科の大学院生で、中坊徹次現館長の下で博物館において研鑽されていました。また、カンジャナ先生のレクチャーを流暢でわかりやすい日本語に通訳してくれたのは大学院情報学研究科の大学院生の市川君です。優秀な若手研究者がわかりやすく研究成果を披露してくれたことは、参加した小学生や中学生たちにとって大きな刺激となったと思います。

今回は、参加者のおしかりを受ける場面もありました。毎回ジュニア、シニアと主な対象を示して案内をしていますが、ジュニア向けとして案内したレクチャーにやや専門的な内容のものがあり、講演の後の質疑応答の中で、「対象者にさらに配慮した準備を望む」との発言をいただきました。レクチャーの企画担当者としてスピーカーの先生方にきちっと趣旨をお伝えし切れていなかったことで、スピーカーにも参加者にもご迷惑をおかけする結果となりました。今後は、このようなことが起きないようさらに努力してゆきたいと反省しております。

さてこの9回に限ってみても、地学、古生物学、動物学、考古学、日本史、教育学と幅広い分野からの話題提供をいただくことが出来ました。今後とも広い研究分野からの優れた研究者のレクチャーを提供してゆきたく思います。自薦・他薦を問わずスピーカーのご推薦をたまわることが出来れば幸いです。

(京都大学総合博物館・情報発信系・教授 大野照文)

  • no.31「火山の不思議」スピーカー:古川善紹先生(京都大学大学院理学研究科附属地球熱学研究施設助教授)・平成17年1月22日(土)・(ジュニアレクチャー)
  • no.32「四~六世紀における半島の倭人たちと「日本府」問題」スピーカー:李 在碩先生(京都大学総合博物館客員教授・高麗大学日本学研究所研究教授)・(シニアレクチャー)・平成17年2月5日(土)
  • no.33「サンゴ礁の生きものに憧れて」スピーカー:伊勢戸徹先生(京都大学総合博物館研修員・日本学術振興会特別研究員)・(ジュニアレクチャー)・平成17年3月26日(土)
  • no.34「海の動物たちを絶滅から救う!タイと日本の共同研究プロジェクト」スピーカー:アドゥルヤヌコソル・カンジャナ先生(総合博物館客員教授・タイ国国立プーケット海洋センター上級海洋生物学者)・通訳:市川光太郎(京都大学大学院情報学研究科大学院生)・(ジュニアレクチャー)平成17年4月9日(土)
  • no.35「最近、森の外でクマさんと出会うわけ」スピーカー:大井徹先生(独立行政法人森林総合研究所関西支所・生物多様性研究グループ長)・(ジュニアレクチャー)・平成17年5月14日(土)
    大井先生のレクチャー風景
  • no.36「「自由」な京大生になるための教養教育と折田彦市」スピーカー:厳 平先生(同志社大学嘱託講師)・(シニアレクチャー)・平成17年5月21日(土)
    厳先生のレクチャー風景
  • no.37「考古資料の診断と治療-保存処理技術者の目-」スピーカー:伊藤幸司先生(大阪市文化財協会)・(ジュニアレクチャー)・平成17年5月29日(日)
  • no.38「日本海の魚たち」スピーカー:甲斐嘉晃先生(京都大学フィールド科学教育研究センター助手)・(ジュニアレクチャー)・17年6月25日(土)
  • no.39「小さな小さなプランクトンのお話」スピーカー:西田史朗先生(奈良教育大学名誉教授・地域自然誌研究会主宰)・(ジュニアレクチャー)・平成17年7月30日(土)・(午前中のレクチャーに続いて、午後には電子顕微鏡によるナンノプランクトンの観察会も開催してくださった)。

京都大学総合博物館入館者10万人突破

総合博物館では、平成13年6月1日の開館以来の入館者が本年8月20日(土曜日)に10万人を突破しました。10万人目の入館者となられたのは、岐阜県神戸町の公務員四井清裕さん(43歳)らの家族6名です。

博物館において行った記念セレモニーでは、家族を代表して四井勇佑君(12歳)に中坊徹次館長から記念品として、当館オリジナルTシャツや企画展図録などを贈呈しました。

開館当初年間2万人程度だった入館者が、昨年以降、春、秋の企画展の入場者数が伸びたため、当初の予想よりやや早く4年3カ月目にして10万人目を達成することができました。

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京都大学総合博物館日誌(平成17年1月~平成17年8月)

協議員会
1月14日(金)第20回協議員会
6月20日(月)第21回協議員会
運営委員会
1月12日(水)第19回運営委員会
6月15日(水)第20国運営委員会
教員会議
1月14日(金)第86回教員会議
2月10日(木)第87回教員会議
3月11日(金)第88回教員会議
4月 8日(金)第89回教員会議
5月13日(金)第90回教員会議
6月10日(金)第91回教員会議
7月 8日(金)第92回教員会議
外国人研究員
3月15日(火)リ・ゼソク氏(大韓民国・高麗大学日本学研究所助教授)帰国
4月 1日(金)~6月30日(木) アドウルヤヌコソル・カンジャナ氏(タイ王国・国立プーケット海洋生物学センター上級海洋生物学者)
7月 1日(金)(~9月30日・金) ペン・チンイ氏(台湾・中央研究院生物多様性研究センター研究員)来学
展示
4月 6日(水)~8月28日(日)
平成17年春季企画展「考古学を愉しむ一新堂廃寺出土瓦の分析-」
企画展関連行事
毎週土曜日 展示解説
7月23日(土)「瓦資料観察教室(造瓦道具の痕跡捜し)」
8月 6日(土)「博物館展示と考古学の研究」講演会
8月 7日(日)「考古学研究と博物館の展示」講演会
8月20日(土)「瓦資料観察教室(造瓦道具の痕跡捜し)」
公開講座
5月21日(土)・28日(土)・6月4日(土)・11日(土)
第17回公開講座「考古学を愉しむ一考古資料を読む-」
学習教室
1月15日(土)シニア学習教室「大人のための学習教室 貝を調べましょう」
3月26日(土)春休み学習教室「大人のための春休み学習教室 貝を調べましょう」
3月27日(日)春休み学習教室「アンモナイトにふれよう!」
6月11日(土)おとな向け体験学習教室「おとなが学ぶ二枚貝 貝体新書」
8月 6日(土)夏休みジュニア化学教室「化学反応で作ろういろいろな形」
8月13日(土)夏休みチャレンジ学習教室「フズリナの薄片をつくって生きていた時代を決めましょう」
8月24日(水)夏休み学習教室「火星探査ロボットを作ろう」「ストローで丈夫な建物を作ろう」
8月25日(木)夏休み学習教室「三葉虫を調べよう」「フイルムカメラで京都大学を写そう」「カリンバを作って演奏しよう」
8月26日(金)夏休み学習教室「勾玉(まがたま)を作ろう」「二枚貝を調べよう」「望遠鐘を作って月を観察しよう」
8月27日(土)夏休み学習教室「本物の標本を触ってみよう」「三葉虫を調べよう」「化石を使って生物進化年表を作ろう」
8月28日(日)夏休み学習教室「本物の標本を触ってみよう」「江戸時代の京都ヘタイムスリップしよう」「ミクロの世界を観てみよう」
レクチャー・シリーズ
1月22日(土)no.31「火山の不思議」
2月 5日(土)no.32「四~六世紀における半島の倭人たちと『日本府』問題」
3月26日(土)no.33「サンゴ礁の生きものに憧れて」
4月 9日(土)no.34「海の動物たちを絶滅から救う!タイと日本の共同プロジェクト」
5月14日(土)no.35「最近、森の外でクマさんと出会うわけ」
5月21日(土)no.36「『自由』な京大生にな_るための教養教育と折田彦市」
5月29日(日)no.37「考古資料の診断と治療一保存処理技術者の目-」
6月25日(土)no.38「日本海の魚たち」
7月30日(土)no.39「小さな小さなプランクトンのお話」
その他活動
1月21日(金)京都大学ミュージアムコンサート2005
1月29日(土)「第2回 ミクロワールドサイエンスショー」
3月12日(土)「情報機器や総合博物館を活用した『総合的な学習の時間』の運営」シンポジウム
6月25日(土)「『わざ』再発見-デジタル的身体からアナログ的身体へー」人文アカデミー・シンポジウム
8月11日(木)・12日(金)「京都大学オープンキャンパス2005」
8月20日(土)「10万人目入場者記念品贈呈式」
8月25日(木)「カリンバ・カリンバ・カリンバ」コンサート
人事異動
4月1日(金)掛員 服部敦史(国立若狭湾少年自然の家事業推進課事業調査係へ転出)
主任 宮内友則(独立行政法人京都国立近代美術館 庶務課庶務・学習普及係より転入)
※4月1日より事務組織の再編により事務室の所属が変更。学術情報メディアセンター等事務部博物館事業掛より総務部社会連携推進課総合博物館掛へ変更。専門職員は社会連携掛長へ変更。
7月1日(金)総務部社会連携推進課長 西村文恵(京都市総合企画局プロジェクト推進室担当課長より)

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常設展

  • 自然史
  • 文化史
  • 技術史

ご利用案内

開館時間
9:30~16:30(入館は16:00まで)
休館日
月曜日、火曜日(平日・祝日にかかわらず)
年末・年始(12月28日~1月4日)
観覧料
個人観覧料
  一般 高校・大学 小・中学生
一人 400円 300円 200円

障害者手帳をお持ちの方とその付き添いの方1名、および70歳以上の方は無料です。(年齢確認ができるものをご提示ください。)

団体観覧料(20人以上の場合)
  一般 高校・大学 小・中学生
一人 300円 200円 100円

団体20人につき、引率者1人分の観覧料が無料になります。

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