企画展・特別展

平成22年度速報展示「クニマスー70年ぶりの生存確認ー」

開催期間:
 1月14日(金)から1月23日(日)まで、速報展示「クニマスー70年ぶりの生存確認」と題し、歴史的な田沢湖産クニマス標本と昨年に生存確認されたもとになった西湖産クニマス標本を、解説パネルと共に期間限定で公開いたします。
なお速報展示に伴い、中坊教授による講演も開催される予定です。(詳細は下記のとおり)
多くの方々のご来場をお待ちしております。
 

クニマス展の開催にあたって

 
 
クニマスは秋田県田沢湖にしかいない魚でしたが、1940年を契機に姿を消しました。
ところが、昨年末から報道されているように、私たちは70年ぶりにクニマスの生存確認をしました。1935年に秋田県田沢湖から10万粒の発眼卵を山梨県西湖に移植しましたが、それが現在まで命をつないできたのです。
京都大学総合博物館には大正時代の田沢湖産クニマスの標本が9個体あります。これは、日本の淡水生物学の黎明期に京都大学の川村多實二教授(動物生態学者)があつめたコレクションのひとつです。
1922年に米国スタンフォード大学のデイヴィッド・スタア・ジョルダン(魚類学者)が日本産魚類を採集するために来日しました。ジョルダンは琵琶湖産魚類の採集のために川村教授のいる京都大学大津臨湖実験所をおとずれたのです。そのとき、川村教授はクニマスの標本を3個体、ジョルダンに託しました。
日本の淡水生物について生態を研究するためには、それぞれの種についての分類ができていなくてはなりません。それぞれの種に学名をつけてはっきりと認識しなくてはなりません。
当時、日本の淡水生物には学名のない種(これが新種になります)がかなりありました。
当時、ジョルダンは教え子とともに日本産魚類の分類に関する夥しい論文を書いていました。米国の碩学ジョルダンにクニマスの記載を託したのです。
ジョルダンはこれら3個体をタイプ標本にしてクニマスを新種として記載し、学名Oncorhynchus
kawamuraeにしました。種小名のkawamuraeは川村教授にちなんでつけられたのです。
このコレクションのクニマスはもともと12個体で、それらのうち3個体が米国にわたりタイプ標本になったのです。
この歴史的な田沢湖産クニマス標本と昨年に生存確認されたもとになった西湖産クニマス標本を展示に供しました。生存確認の経緯も記しましたので、標本ともどもご覧いただければ幸いに存じます。
(中坊徹次)
 

講演「クニマスー70年ぶりの生存確認ー」

 
日時:平成23年1月23日(日) 14:00~14:30
場所:京都大学総合博物館1階 ミューズ・ラボ
講演者:中坊 徹次(京都大学総合博物館教授)