2019年度企画展
「地の宝Ⅱ 比企鉱物標本」
京都大学総合博物館には、京都帝国大学時代から100年をかけて集められた2万点以上もの鉱物標本が収蔵されています。なかでも工学部由来の比企(ひき)鉱物標本は、現代では入手することのできない、国内では最高峰の鉱物コレクションです。これらの鉱物標本の持つ迫力や美しさは圧倒的で、まさに自然が作り出した「地の宝」といえるでしょう。工学部採鉱冶金学科の教授であった比企忠(ひきただす)は日本中、世界中から鉱物・鉱石を集めており、当時その標本室を見たものからは国宝とも称されていました。その後、比企の鉱物コレクションの存在は学術界からさえも長年忘れ去られていましたが、工学部、そして総合博物館へと丁重に引き継がれてきました。整理を進めていると、すべての標本に比企の手書きのラベルが添えられており、比企忠という研究者の姿や比企が標本に込めた想いまでもが現代によみがえるかのようでした。多くの金属鉱山が閉山した現代の日本ではこれらの標本が持つ学術的な価値はかけがえのないものです。
今、100年の時を越え、比企の集めた至高の鉱物・鉱石コレクションがふたたび展示室に姿を見せます。美しい鉱物と鉱石の世界をお楽しみください。
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主催:京都大学総合博物館
共催:京都大学大学院理学研究科地質学鉱物学教室、京都大学大学院工学研究科
後援:京都府教育委員会、京都市教育委員会
協力:京都府立図書館、公益財団法人益富地学会館
展示構成
●地球をつくる鉱物の世界
地球は数多くの鉱物からできています。色やかたち、重さも様々な鉱物たちですが、その化学組成と結晶構造から系統的に分類することができます。普段は目にすることのできない鉱物の結晶の美しさや自然の不思議に出会えます。
●社会を支えた鉱石と鉱山
かつての日本には数多くの金属鉱山があり、社会の発展のために金、銀、銅、鉛、亜鉛などの鉱石を採掘していました。現在の日本ではほとんどすべての金属鉱山が閉山しており、鉱山や鉱石は身近なものではなくなってしまいました。100年前の日本各地の鉱山の最高品位の鉱石を見ることができます。
●比企忠と「標本の志るべ」
比企忠(1866-1927)は、日本の鉱物学の黎明期を生きた鉱物、鉱床、地質、博物学者であり、生涯をかけて多くの鉱物標本を集めました。病床で「標本の志るべ」と題した自身の標本の解説書を遺すほどに標本を大切にしており、比企の遺した言葉からは標本への深い思いが感じられます。
講演会情報
※申込不要、先着順、いずれも講演後に展示解説ツアーを開催
日時 | タイトル | 演者 |
8月10日(土) 14:00-15:00 |
比企忠という研究者 |
白勢 洋平 (京都大学総合博物館・助教) |
8月17日(土) 14:00-15:00 |
日本の国石 |
下林 典正 (京都大学大学院理学研究科・教授) |
9月8日(日) 14:00-15:00 |
鉱物の研究と試料作製 |
高谷 真樹 (京都大学大学院理学研究科・技術職員) |
9月15日(日) 14:00-15:00 |
宮沢賢治と鉱物 |
桜井 弘 (京都薬科大学・名誉教授) |
10月5日(土) 14:00-15:00 |
近代日本を支えた鉱物資源 |
豊 遥秋 (産業技術総合研究所地質標本館・元館長) |
10月19日(土) 14:00-15:00 |
本草学から鉱物学への道 |
石橋 隆 (益富地学会館・研究員) |
関連ミニ展示
京都府立図書館で8月23日(金)から1か月間、関連ミニ展示「第三高等学校の鉱物標本」を行います。