企画展・特別展

平成21年秋季企画展「学術映像博2009」

開催期間:

学術映像博について

映像はその誕生以来、森羅万象のさまざまな諸事象を記録・保存し、伝えることで、学術を支えつづけています。映像はマクロとミクロの次元で、空間的・物理的に人間の肉眼ではとらえられない諸事象のイメージを、わたしたちに提供し続けています。また、近年では、映像機器・メディアの再現力、操作性、機動性などが増し、ムーヴィング・イメージをより精緻に操作することが可能になりました。人間社会が依拠する時間軸に沿ったわたしたちの認識や感覚を、さまざまな生物の認識や感覚にあわせたものとして調整する試みさえも可能になっています。近年の映像機器・メディアの急激な技術的進歩は、森羅万象についての学術の知的営みを、従来以上に大きく転回させているのです。また、その技術的進歩は、コミュニケーションのツール、表現としての映像の可能性も広げ続けています。映像は、記録や保存、分析のためのツールであることを超えて、さまざまな研究分野をつなぎ、また研究と社会をつなぐメディアとしても、学術を新たな展開に導きつつあるのです。

のこす、よみとる、あらわすこうした状況を受けて、2009年度秋季企画展は、研究過程で生まれている豊富な映像と、映像に関わる研究者の実践を広く紹介し、学術と映像の関係を考えるための試みとして企画されました。映写スペースと展示では、日々の研究で生み出され、蓄積され続けている映像群を「学術映像」としてとらえなおし、研究者の映像実践の核である「のこす」「よみとる」「あらわす」というキーワードを羅針盤として披露します。そこでは、映像の美しさに目を奪われることもあるでしょうし、予想もしない映像と映像の組み合わせに驚くこともあるでしょう。他人にみせるために撮ったものではなく、通常は公開しないような研究用の映像も上映します。物語性を見出せそうにないそうした映像に、かえって研究の魅力を感じ、知的な探求心をかきたてられることもあるでしょう。また、本企画展では、映像をただ上映するだけではなく、研究者によるトークイベントやワークショップによって、みなさまとともに学術と映像の関係について考える場も設けます。映像博のフィナーレでは、「学術映像コンペティション」に応募され入選したさまざまな映像を上映します。

全会期を終えたのち、「学術映像」という総体をイメージすることができたなら、今度は、映像というわたしたちの目の前に広がるもうひとつの無限のイメージの宇宙を、学術をたよりに旅することができるかもしれません。本学術映像博2009が、映像とわたしたちの未来を見通す手がかりになることを期待しています。

詳細ページ
http://inet.museum.kyoto-u.ac.jp/expo/index.html